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西澤会長の   「ちょっと寄り道」  その13

前回に引き続き、ミニ講習(2月)の内容をお知らせします。
【ミニ講習から】
 今回のミニ講習の結論を申し上げます。
リーダーは、
  ○ リスクを事前に把握する。
  ○ 常に最悪な状況を想定し、最善の回避方法を選択する。
  ○ 目標は、登頂ではなく安全な下山。
  ○ 他者の意見を受け入れる寛容さを持つ。
  ○ 日々の情報収集、トレーニングを怠らない。
 次は、リーダーの最も重要な役割であるリスクマネジメントについてです。
 この度9ページという多くのスペースをいただきお伝えしたかった1つの柱は、このリスクマネジメントです。
 山行には様々なリスクがあると考えられます。ルート上の危険箇所、天候、季節、メンバー、計画等です。リーダーは、こうしたリスクを出来るだけ早く把握し、事故を未然に防止することが求められます。大切なことは、出来るだけ早くリスクの予兆を確認することです。メンバーも足や体調不良等があった場合は、リーダーに早く伝えることが重要です。安易に「まだ大丈夫だろう」「もう少ししたらおさまるだろう」等の遠慮は無用です。むしろ、個人のリスクはパーティー全体のリスクととらえるべきです。
 次は、撤退の判断です。ここのポイントは、的確な状況判断と早めの退避行動の開始です。最初に申し上げましたように目標は登頂ではなくパーティーの安全な下山です。また、撤退する場合は、安全第一の退避方法の選択とメンバーの合意形成が重要です。
 仮に事故が起こった場合は、パニックにならないことです。そして第2次、第3次の事故を絶対に起こさないことです。そのためには、リーダーの冷静な態度、状況の確認及び判断、正確な記録、パーティーの安全確保がポイントとなります。
 最後が山行の反省です。「反省点」のない山行はあり得ません。メンバーの気づきが次回以降の事故予防に極めて有効となります。そうした意識を持って山行に臨むことが大切です。リーダーはメンバーの気づきを含めて例会や会報で山行報告をするとよいでしょう。
 次の柱はリーダーの法的責任です。ここで押さえておかなければならないのは、当会の山行は自主山行であり、事故等の責任は参加したメンバー各個人の自己責任であるということです。ですので、原則として当会の山行においてリーダーに法的な責任が生じることはありません。法的責任の有無のポイントは、リーダーとそれ以外のメンバーとの間に「危険を認識する能力」「事故を予見する能力」「危険を回避する能力」に差があるかどうかです。因みにガイド山行や学校登山などの引率登山と当会の自主登山とでは同じような事故でもリーダーの責任は大きく異なります。大変ザックリですが比較すると表のようになります。

    リーダーとメンバー間の     引率登山   自主登山

    危険認識・危険回避能力の差    大      対等

    リーダーへの依存度        大      対等

    安全配慮義務           大      対等

    リーダーの法的責任        大    基本的になし

(具体的事例)説明は省略

 

    ケース    法的責任     理由等

 

    山仲間の  原則法的責任は リーダーは他のメンバーに対して特別優越的な地位に

    リーダー  問われない   あるわけではないので、他のメンバーに対する安全配

                  慮義務はない

                  他のメンバーは大人で山の一般的な危険性の認識が

                  あり、危険を回避する行動をとることは十分期待

                  できるので危険回避は各人の自己責任である

    ガイド山行 法的責任を   ガイドには契約(書面の有無に関係ない)に基づいて、

    のガイド  問われる    客の安全を守る義務がある

          可能性大    ガイドには経験上事故の予見性があると考えられる

                  ガイドには遭難を回避する義務がある

 

    高校山岳部 法的責任を   生徒は危険を認識する能力が十分でなく、自ら危険を

    の顧問   問われる    回避することは期待できない教師と生徒との指示命令
          可能性大    関係という明らかな上下関係があり、生徒は自分の

                  意思で行動を決定することはできない
                  学校のクラブ活動は教育活動の一環であり、

                  教師には教育的配慮が要請される


事故時の対応については、ページ数の関係で十分に触れることができませんでしたが、今後運営委員会を中心に検討されることを希望します。
 最後に、誤解の無いように付言しておきますが、リーダーには基本的に法的責任が問われることがないから誰もがリーダーをやるべきだということではありません。先月号で触れましたが、リーダーをやることは会員としての義務であり、リーダーを引き受けることは当人にとってかけがいのない財産となるからです。そしてリーダーとなるために日々の努力を怠らないことこそが重要です。
 これにて「名古屋」となります。長い間お付き合いいただきありがとうございました。

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